MY STORYマイストーリー
私の服飾に対する想いとその背景についてお話しさせていただきます。makerは、私のスタイルを形づくってきた、私の製造元です。
MAKER.1
「MEN’S CLUB」
物心ついた時から、絵を描くことが好きだった私は、動物、人、車、電車、飛行機などを模写している内に、デザインに興味を持つようになりました。中学生の頃は、大人が身に着けるものである腕時計や革靴、ネクタイ、そして特にジャケットの形といったものに魅かれましたが、その中でも「あれはかっこいい」「これは好きではない」と私なりの服飾に関する価値観が作られていきました。
その方向性をセットしてくれたのは、婦人画報社の「MEN’S CLUB」。この本を介して、色々なブランドやデザイナーの影響を受けました。写真は今、手元にある一番古い「メンクラ」ですが、こちらのスナップにも載せて頂きました。1996年のことでした。
MAKER.2
「BrooksBrothers」
「メンズクラブ」に掲載されていた、沢山のブランドやデザイナーにはとても刺激をもらいました。中でも1818年創業の「ブルックスブラサーズ」にはアメリカントラッドとメンズウェアの基本を教えてもらったと思います。まさに『伝統と革新』のブランド。「サックスーツ」「ポロカラーシャツ」「シアサッカーサマースーツ」「レップタイ」などを生み出して、それらを世界に浸透させ、歴代米国大統領や著名なトレンドセッターたちが愛用していました。
ツィードジャケットのザックリ感、リネンパンツの清涼感、シアサッカースーツの肌触り、いずれもブルックスを通してその素晴らしさを体感し、3つボタン中一つ掛けのジャケットは今もマストアイテムです。「ブルックスブラサーズ」、私のスタイルの基盤でもあります。ジャケット、シャツ、タイはくたびれてしまいましたが、これらの小物類はいずれも現役で25年以上愛用しています。
MAKER.3
「ALAN FLUSSER」80年代のカタログ
「Savile Row classic with elegance」この名言を自身のブランドで体現したのは、「アラン フラッサー」。
ブルックスブラサーズがアメリカントラッドの安心感を与えてくれたのに対して、フラッサーにはブリティッシュトラッドのエレガントを感じます。1987年に行きつけのショップ店員さんが、当時纏っていたものに衝撃を受けたのを今も憶えています。典型的な日本人顔ですが、出で立ちは1930年代の英国紳士である「フラッサー」との出会いでした。
多少角張ったショルダーに、バストからウェストにかけてのドレープとシェイプライン、フレアーに広がるジャケットの裾など、私にとって初めて見るブリティッシュトラッド。この新鮮な感覚を味わうべく、私は即オーダーしました。
購入したのは、ネイビーのウーステッドにチョークストライプが入ったもので、上記の基本デザインに加え、チェンジポケットが配されたダフルの6つボタン下1つ掛けのジャケット。きちんと開けられたフラワーホールには花の茎を留めるループが付いています。パンツは股上の深いインプリーツで、サイドアジャスターか付いたベルトレスはサスペンダーで吊るして履きました。
「1987年に購入した前述のフラッサーのスーツ」
アラン フラッサーからは、他のディテールについても教えられました。シャツ襟の高さやラペル幅、ゴージラインの高さ、胸ポケットにあしらうチーフのたたみ方、ジャケット丈、袖丈の長さ、その他もろもろとても学ぶことができました。そこで得たのは、「ルールとバランス」のセンスを磨くことによって、男らしさ、美しさが際立つという哲学であり、今の服作りの一つの根底を成しています。
MAKER.4
「Ralph Lauren」
今も右肩上がりを続けている紛れもなく個人ブランドの頂点「Ralph Lauren」。勿論、ブランドのスケールだけではなく、そこに表現される世界観は他の追随を許さない、すべてを圧倒した存在と言えます。そんな孤高のラルフローレンですが、私のような一介のデザイナーとも共通点があります。彼はあるインタビューの中でこう語っていました。
「私はファッションが好きではありません。タイムレスなもの、時代を感じさせない永続的なものの中でこそ、その人の個性は光ると信じています」と。その言葉と同じように、私も変わらない“もの”が好きです。これまで身に付けてきたものの多くは、ファショナブルではなくタイムレスなもの。1980年代年に、初めて気に入って手に入れたツィードジャケットは古着ですが、今も愛用しています。
次に、当時直感と感性だけで買ったこのジャケットはハリスツィードのハッキングジャケットで、ラギッド感満載です。オリーブカラーのジャケットに合わせるのは、洗いざらしのシャンブレーシャツ、リーバイス501、グリーン系のハンチングに足元は赤茶のジョッパーブーツ。何十年もこのスタイルに変わりはありません。自分なりの『永続的で個性ある』ものだと思っています。
ここ京都に来て最初に購入したのは、ラルフローレンのツィードジャケット。ざっくりしたブラウン系のグレンチェック、Vゾーンの広いフロントは2ボタンでチェンジポケットが付き、深く切れ込んだサイドベントが特徴であり、勿論これも現役です。ラルフローレンに対する認識は、自分をデザイナーへと駆り立てる原動力です。
MY THOUGHTS私の想い
【130年前の英国スタイル】
「タイムレスなスタイルを服飾で表現する」(現: RUGGED & CLASSIC)をテーマに作家活動をスタートし、今年で12年目を迎えます。タイムレスなスタイルは、時間とともに美しさ、あるいは無骨さを昇華させます。100年前の服飾であるのに、今も愛用されているツイードジャケットやキャスケット、そしてリーバイスの501に代表されるジーンズなどはまさにタイムレスな装いに相応しいと言えます。
100年前の服飾デザインをベースに、100年後も愛用される作品創りが創作活動の基盤です。仕立てに込められたこのテーマを受け取ってくださる皆様には本当に感謝して製作を続けています。
最近お客様からいただいた、「素敵です。縫製が緻密で、今まで見たことがありません。いつもながら大満足です」というメッセージを胸に、これからも大満足な仕上がりのタイムレスなスタイルをご提案してまいります。
デザイン
デザインの骨格は「RUGGED & CLASSIC」です。ラギッドは「武骨・頑丈・凸凹」を意味しますが、服飾などに当てはめると労働着や軍用着などになり、強い生地であることに加え機能的であることも意味します。つまりマテリアルはデニム、ツイード、リネンとなります。同時にクラシックなデザインにも強い魅力を感じていますので、カッティングの多くは、19世紀末から20世紀初頭に見られるパターンやディテールを取り入れています。具体的には「ノーフォークジャケット」「ラウンジジャケット」などのディテールを当時の型紙をベースに仕立てています。もう一つのポイントはパッチワークや刺し子などで「ラギッド感」に深みを与えている点です。元々パッチワークや刺し子は擦り切れ破れたものを再生させる伝統的技法で、世界中で何百年も前から見られるもの。ベストドレッサーとして知られる英国チャーズル国王の、自身の服や靴の破れをパッチワークで修復した「チャーズルパッチ」は時代や階級を超えたものでした。
マテリアル
Harris Tweedに惹かれる理由。毎年秋が深まると出番を迎える「ハリスツイード」。この生地で仕立てたジャケットを愛用して30年以上になります。ハリスツイード独特の風合いに並ぶものはない、まさに唯一無二の存在であることをまずはご紹介したい思います。
スコットランドの北西部に位置するアウター・ヘブリディーズ諸島。その最北端にあるハリス島とルイス島が「Harris Tweed」の故郷です。ハリスツイードの色彩と柄は全て「島の風景や自然」から生み出されているのが特徴の一つです。
歴史
参考画像は#harristweedauthorityから拝借し編集したものですが、ベーシックな柄からカラフルなものまで「島の風景や自然」に由来するものであることがわかります。このツイードジャケットを纏う度、ハリス島の美しい風景に想いを馳せ、その味わい深い「ラギッド」感を堪能できます。ツイードの歴史は古く、18世紀スコットランド・アイルランド地方の粗く厚い毛織物として「農民の防寒着」からスタートしたと言われています。18世紀末、ツイードはイギリス全体に浸透しました。アウター・ヘブリディーズ諸島の「ハリスツイード」、アイルランド北西部の「ドニコル・ツイード」、シェトランド諸島の「シェトランド・ツイード」が生まれ、それらが今日のツイード素材の基礎を作りました。19世紀に入ると、ツイードは貴族たちのハンティングやフィッシングをサポートする「カントリー・ウェア」に格上げされ、「農民の防寒着」から現在知られる「高級素材」へと成長。その中でも「Harris Tweed」が一目置かれる存在であり、そこにはイギリス国家挙げてのプロジェクトが関わることになりました。
『ハリスツイード』の名前は知っていても、それがイギリス国会制定法によって守られている、世界で唯一の生地である、ということを知っている人は、あまり多くありません。その目的は、「生地自体の保護」と「生地を作る文化の保護」です。1993年イギリス国会で正式に、「Harris Tweedの定義」が以下のように定められました。
1.「Harris Tweed」を生産できるのは、ハリス島、ルイス島、ウィスト島、バラ島と、その周辺のアウター・ヘブリディーズ諸島の島に限る。
2.ピュア・ヴァージンウールのみを原料とし、染色・紡績・織り上げまでの全ての工程を、各島内で行わなければならない。
3.「Harris Tweed」を織り上げるのは、島の織り手の自宅とし、全て人力による手織りである事。
現在ビンテージ漂うハリスツイードジャケット250着(古着)を保管し、それらを分解してパッチワークで服飾に仕立て直すことに強い意欲を抱いています。
PATCHWORKエイジングデニムの魅力をパッチワークで伝える
デニムの魅力のひとつに”エイジング”があります。自然な色落ちによって表れるインディゴブルーのグラデーションは、デニム好きの間では「デニムを育てる」とも呼ばれるほど愛着が注がれることもあります。
異なる環境で育ったそのエイジングデニムをパッチワークで表現し、身近な服飾に再生させることでデニムが秘める美しくも無骨な魅力を伝えたいと思っています。
エイジングも行き過ぎるとタンスの肥やしになったり処分されたりしてしまいますが、デニムの程良く育った部分を切り取り組み合わせて「パッチワーク」にすることでまさに異なる環境で生み出されたグラデーション同士の共演を生み出すことができます。それをより身近に感じて頂くために服飾という形で再生したものが私の作品であり、古着のデニムがパッチワークデニムのキャスケット、ネクタイ、ベスト、スカート、ジャケットなどに生まれ変わります。
自然な色落ちによって現れるインディゴブルーのグラデーション、デニムの持つ魅力をパッチワークで表現した様々な服飾を当店の製品にてぜひご体感ください。